今日は、地元旅行社の、フィステーラ岬までのバスツアーに参加することにします。巡礼者の多くは、サンティアゴ・デ・コンポステーラに着いた後も80㎞歩き続け、この、地の果てるところをゴールとします。巡り会った巡礼仲間の多くも、そう言って出発していきました。まだ旅を続けられるというのは、うらやましくもあります。

ムシアに向かう途中、最初に立ち寄ったのは、ポンテ・マセイラPonte Maceira(ネグレイラ)。ローマ橋と呼ばれる中世の美しい橋が残り、流れを利用して石臼挽きをする古い製粉所も見ることができます。

ムロスは、大きな湾に面した村。古い漁村特有の街並みが史跡群として大切にされています。魚市場も素敵です。

広場にある十字架にはキリストとマリア様が背中合わせになっています。一方は海の男たちを、一方は陸の村人を、守るためだそうです。
もちろん、新鮮な海の幸をいただきました。ここの名産、マテ貝、ムール貝、そしてカメノテ! カメノテはペルセベスなんてかっこいい名前。磯の味が口いっぱいに広がります。

ムシアも聖地のひとつです。ここで説教をする使徒のところに、聖母マリアが石の舟に乗ってやってきて、励まし力を与えたといいます。細い岬の先、波に洗われるような場所に立つ礼拝堂の先に、その石とされるものがあります。

フィステーラ岬は「この世の果て」という意味。もうここから先に地面はありません。海は潮流が速く荒れています。むかしむかしの人たちは、ここにたどり着いてどのような思いでこの恐ろしい海を見たのでしょう。水平線のその先は、奈落の果てまで落ちていると思ったでしょう。
古代ローマ人やケルト人にとっても、特別な場所だったそうです。
巡礼者たちはここで巡礼の間身に着けていた服や靴を脱いで燃やしたといいます。その習慣は禁止される十数年前まで続いていました。岩に焦げ跡が残っています。

巡礼者たちは、服や靴だけでなく何かをこの海に捨てていくといいます。私は何を捨てましょうか。

まずは「傷」を捨てることにしました。今までの人生で負ったと思っている大きな傷も小さな傷も。ひとつひとつを覚えているのは、思えばつまらないことです。日本に帰ってから負った傷がたまっていったら、またどこかの海に捨てにいきましょう。

そして「後悔」も捨てることにしました。「あの時こうしていれば」「あの時こうしなければ」。巡礼路は時に分かれることがあり、通らなかった道が気になっても、戻ることも両方通ることもできません。そして選んだ道でさまざまな景色に、人に会いました。

これから先、迷ったとき、必ず黄色い矢印が進む方向を導いてくれるでしょう。